大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(ネ)745号 判決

控訴会社は、控訴人谷口は控訴会社の被用者ではなく独立して砂利の運搬、販売を業とする者であると主張するのでこの点について考える。

本件事故発生の際、控訴人谷口が運転していた貨物自動車が控訴会社の所有であること、控訴人谷口が日常右貨物自動車を運転して砂利等の運搬をしていたことは控訴会社の認めるところである。そして、成立に争いのない乙第二号証の四によると、控訴人谷口は昭和二十七年三月中から控訴会社(控訴会社はもとトキワ産業株式会社と称していたことは弁論の全趣旨に徴して当事者間に争いがない)に自動車運転手として勤め同会社所有の貨物自動車を運転して控訴会社の砂利砂等の運搬に従事していたことが認められる。控訴人谷口は当審における本人尋問において、同控訴人は控訴会社に雇われたものではなく、砂利砂等を控訴会社に販売していた者であり、貨物自動車は控訴人谷口の所有であるが、自動車購入代金を控訴会社から借りた関係上名義だけを控訴会社名義にしたものであると供述しているけれども、該供述は前掲乙第二号証の四の記載事実に徴して措信し難く、また、民法第七百十五条にいう使用者と被用者との関係は必ずしも明確な雇傭関係を必要とするものではなく、事実上或人の指揮監督のもとにその意思によつてその所有の自動車を使用してその業務に従事するような場合もこれに該当するものであつて、本件においては前掲乙第二号証の四によると、当日はいつものように控訴人谷口は控訴会社の所有貨物自動車を運転して控訴会社の砂利を多摩川登戸附近の河岸から青山まで運搬したものであることが認められるから、控訴人谷口は控訴会社の指揮監督のもとに控訴会社の意思に従つて、その業務に従事していた者と認めるのが相当であるから、控訴人谷口は民法第七百十五条にいう被用者といわなければならない。

また、控訴会社は、本件事故は控訴人谷口が控訴会社の仕事を終つた後、かねて他に預けてあつた長女(当時五才)を引き取るため本件自動車を運転してその預先である東京都大田区久ケ原所在の妻の実家え向う途中に発生したものであつて、控訴会社の事業の執行と関係はないと主張し、控訴人谷口は当審における本人尋問において同趣旨の供述をしているけれども、民法第七百十五条にいう「事業の執行につき」というのは使用者の事業を執行するための行動の範囲内において起り得る行為に因る場合をいうものと解すべきところ、本件の事故は前記のように控訴人谷口が控訴会社の被用者として控訴会社の砂利を運んだ後その帰路において発生したものであるから、偶々同控訴人がこの程度の寄り道をしたことは本件事故が控訴会社の業務の執行について発生したものと認めるに支障はない。

従つて、控訴会社は控訴人谷口の使用者として本件事故について重信及び被控訴人等が被つた損害を賠償する義務があるものとする。

(浜田 仁井田 伊藤)

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